【深圳ポータブルオーディオレポート】メーカー訪問(2):TEMPERAMENT(凯声科技)


TEMPERAMENT(テンペラメント)は2013年、広東省東莞市鳳崗(フォンガン)でオーディオ・ビジュアルデバイスの研究開発と製造のため創業した株洲凯声科技有限公司(Zhuzhou Kaisheng Technology Co., Ltd.)によるイヤホンブランドです。シンプルなデザイン理念、リアルな音の再現、快適な装着感の実現をブランドのテーマに掲げています。
TEMPERAMENT社玄関


同社では低価格な製品の製造やOEM対応も行っており、2018年にマスプロダクション対応のため湖南省株洲市に自動生産設備を準備し、年間数十万台規模の製造を行っています。
今回訪問した鳳崗の本社では、製品開発とともにオーディオファイル向けの高級ライン製品の製造を行っていました。
本社製造部門


近年は耳の穴に差し込んでイヤーチップで封鎖するカナル型が主流ですが、TEMPERAMENTでは耳穴の入り口にイヤホン本体を収めて耳あなを塞がずに音を届けるインナーイヤー型(イントラコンカ型)の有線イヤホンに特化しているのが特徴です。
深圳国際耳机展でのTEMPERAMENTブース。インナーイヤー型有線イヤホンに特化したラインナップ。


音に対する素材へのこだわりから様々な金属をケース製作に適用し、近年の上位機種ではチタンを選択。スター精密製5軸加工機を用い、同ブランドのアイコンとも言える「鈴」形状のケースを精密で美しく造形しています。
高精度な金属加工技術


音響製品への最適化を図るため、接着剤を始め基礎材料も自社開発を行い、同社ドライバーユニットの組み立てに利用。磁石のように社外調達が必要な部材については、安定した品質と供給が可能な大手企業から供給を受けているとのこと。
着磁は狙いとするユニット特性に応じ自社にて行っています。


音質に大きな影響を与えるコイルは全て自社で生産され、適用する製品のドライバーユニットに最適な太さや材質を吟味し採用しています。
自社開発ドライバー


本社製造部門ではあえて自動機ではなく熟練したスタッフによる手作業がで製造が進められています。「自動機では手作業に対しどうしても使用する治具の数が増え、誤差の積み重ねにより工作精度が下がる傾向にあります。特にドライバーユニットの作成においては手作業の方が精度が上がり、製作効率や歩留まりの改善から結果としてコストも抑制できる工程があるんです」とのこと。
ドライバー製造工程


そのためにも従業員が落ち着いて気持ちよく製作に集中することができるよう作業環境への配慮を大切にしており、常に改善と改革の精神をもって開発製造にあたっているとご説明がありました。
イヤホンで好きな音楽を聴きながら製作に取り組む同社スタッフ。


外観上の特徴は製品名にもあるように「鈴(Bell)」を連想させるTEMPERAMENT独特のデザインが与えられ、ブランドのアイデンティティとなっています。

黒鈴(Black Bell)はTEMPERAMENTの代表的なシリーズ。ケースには銅やチタン合金を採用し、ダイヤモンドカットのサスペンデッド振動板と強力な磁気回路を持つ同社15.4mmの大口径ダイナミックドライバーを採用。
画像は昨年の秋のヘッドフォン祭にも出品されたBlack Bell 卍 Gold。インナーイヤー型とは思えない重厚な低音と、濃密で艶のあるボーカル帯域を高次元で両立するモデル。


リファレンスモデルの位置付けとなるのがDM7Ti、純チタン製筐体と2.0テスラの磁束密度を誇る大型の15.4mmダイナミックドライバーを採用し、原音再現を追求する非常に高い解像度と正確な原音再現力を誇り、音楽が持つ空気感までをリアルに描写します。
Hi-Unit「ミミゴト」さんを通じて日本にも紹介され、その音と美しい仕上がりを体験された方もいらっしゃるのでは。


小黒鈴(Little Black Bell)シリーズはエントリーからミドルクラスを担うコストパフォーマンスの高い主力シリーズ。やや小ぶりな15mmダイナミック型ドライバーユニットを採用し、イヤホン本体もコンパクトにまとめられています。
TEMPERAMENT X10。透明感の高いニュートラルかつ正確な描写力を持ち、「インナーイヤー型の音ってどうなんだろう」という方の入り口としても良い選択肢となります。


インナーイヤー型を得意とするTEMPERAMENT、代表の易凯さんにカナル型の製品がラインナップに無い理由と将来的な可能性にお聞きしました。
TEMPERAMENTブースと凱さん


「現状カナル型は様々なメーカーが参入し、そのクオリティも近年急速に向上しています。優れた製品が溢れる今のマーケットはメーカーにとりある意味レッドオーシャン的状況ゆえ、私たちはまず自分たちが長年経験を積んできたインナーイヤー型でイヤホンカテゴリーに確固とした地位を築くことにフォーカスしています。」
「先見的な音響デザインと人間工学に基づいた装着デザインにより、古典的と思われがちなインイヤー型イヤホンの音質、外観、装着感を新たな高みへと引き上げています。」
凱さん
「その上で自社の蓄積した技術やアイデアを活かしたカナル型にも挑戦したいと考えています」とお答えいただきました。

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