【深圳ポータブルオーディオレポート】メーカー訪問(1):YUTAI ELECTRONICS(余泰電子)

深圳から車で1時間程、「世界の工場」として世界中の家電や日用品を大量生産してきた一大製造業都市である東莞市。2011年、同地に東莞市余泰電子有限公司(YUTAI ELECTRONICS)が設立され、ヘッドホン用サウンドユニットの研究開発、製造、販売を開始し、翌2012年に音楽用イヤホン事業を立ち上げました。

創業者の余徳泉さんは元々スピーカーの業界に身を置いていましたが、ダイナミックドライバー、骨伝導ドライバーユニットを始め各種ドライバー技術に関する研究開発を行い、多数の特許を取得しています。

2011年の設立以来、数多くの関連特許を取得。 


2016年、初の自社ブランド「Kinera」を立ち上げ、バランスドアーマチュア型レシーバーと9mmダイナミック型ドライバーをそれぞれ一基搭載し、迫力のある低音とクリアなボーカルを両立した同社初の製品「BD005」を発売。リケーブルにも対応しながら価格も200元(約3,200円/2016年当時)を切るという意欲的な製品で、ドライバーユニット他重要構成部品を自社開発できる同社の強みが生かされています。

ダイナミック型ドライバー他、バランスドアーマチュア型、骨伝導式ドライバーユニットなど様々なトランスデューサーを自社開発製造。


翌年にはBD005をベースに、日本向けのチューニングを施したeイヤホンとのコラボレーションモデル「BD005E」が発売されます。日本のポータブルオーディオファンの間で好評を博するとともに、Kineraの名前が知られるようになりました。

eイヤホンとのコラボレーション「BD005E」。リケーブルにも対応するハイコストパフォーマンス機としてKineraの名を知らしめることとなりました。


2018年、「SEED」(BA×1、DD×1)、「IDUN」(BA×2、DD×1)、「ODIN」(EST×2、BA×6)を相次いでリリース。翌年の2019年にはシングルダイナミックドライバー搭載した「Kinera—Sif」、ツイーターに初めてESTドライバーを採用した「Nanna」(EST×2、BA×1、DD×1)を発売。2021年には手頃な価格で提供するサブブランド「Celest」を、その後ポップス向けのマイルドで聴きやすいサウンドを特徴とするQoA(Queen of Audio)をスタートさせ、マーケットニーズに対応した製品群の拡充とユーザーからの安定した高い評価を受けるようになります。

2025年には同社の元中国事業部長、Lorry(李光平)さんが独立した会社(重慶市左宮羽音学科技有限公司)を設立し、新ブランド「ZuoDrum String」(ZDS)をスタート。余泰電子の成熟した研究開発システムと強固なサプライチェーンを背景とした高い音響的特性と芸術性を兼ね備えたオーディオ製品を極めてリーズナブルな価格で提供しています。

ZUO DRUM STRING製品。右はListenvale(聆川)、左がPhanta (幻砂)。

ZuoDrum String代表のLorry・李光平さん。同氏は現在も中国におけるKinera/QoA/Celestのマーケティングディレクターを務め、製品販売とブランド運営を担当。今回の取材にもご対応いただきました。


試聴させていただいた「Listenvale(聆川)」はダイナミックドライバー×1、バランスドアーマチュアドライバー×2、平面磁界型ドライバー×1、骨伝導ドライバー×1の構成。これだけの異なるタイプのトランスデューサーを音楽ジャンルにとらわれずまとめ上げる手腕に脱帽するとともに、高精度CNC彫刻加工が施されたアルミニウム合金製フェースプレートの美しい陰影は「音と形の調和」という同社設計理念を体現するものでした。

ZUO DRUM STRING聆川


これらの4ブランドの製品は東莞の余泰電子本社の製造部門で熟練したスタッフにより手作業でアッセンブルされています。元々ドライバーメーカーとして事業を開始したことから自社開発製造のユニットを多く利用し、エントリーカテゴリーからハイエンドモデルまで幅広いラインナップを揃えています。

同社はマスプロダクション製品も製造をしていますが、高品質なオーディオ向け4ブランド製品については本社製造部門で手作業で製作されています。

手作業だからこそ工程の標準化と見える化による製造工程のモニタリングが求められ、同社4ブランドの受注状況に応じた生産管理が行われています。


3Dプリンターを積極的に活用することで製品開発においては設計とデザインの自由度を高めるとともに、製造でもマーケットニーズへの迅速な対応や在庫コストの削減を実現。多品種少量生産となる同社4ブランド製品の製造を効率的かつ柔軟に行っています。

本社製造部門の3Dプリンター群。樹脂部品の作成は従来金型による成形が必要でしたが、金型製作費用が高額なため数百、数千といった少量生産ではどうしても高コストに。現在では高精度の部品を少量から3Dプリンターで造形でき、スピーディーな製品アップデートやラインナップの拡充が可能になりました。


外観にも強いこだわりを持つ同社では最上級ラインのKinera Imperial(キネラ インペリアル)の製品に専任のスタッフによるハンドペイントフェースプレートを適用。一つずつ微妙に異なる風合いはユーザーにとり唯一無二のものとなり、音質はもちろん、デザインにも妥協のない製品に仕上げています。


Listenvale(聆川)の高精度CNC彫刻加工とはまた異なるアプローチのフェースプレート仕上げ。プリントではなくあえてハンドペイントとするところに最上級ラインとしてのこだわりが。


まだ日本市場への正式なディストリビューションの無いブランド、製品もありますが、音質、製造品質、アウトルック、プライスの製品としてのバランスが極めて高いこれらの製品群、今後の展開をとても楽しみにしています。

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