耳の話その1:人間の耳が持つすんばらしい機能

さて、ひとしきりイヤモニの思い出話をしてみた所で、んー、ちょっと関連の話でも。耳の働きについて、補聴器ベースの話のため面白くないかもですが、自分に二つもついてる割には意外と知らない耳のスゴい機能なんかをかいつまんでみましょう。

どこからスタートるか、いつも迷うところですが、えーとそーだ。電車の中でアレってヤツね。さて、耳は当り前だのク(以下省略)って位、音をキャッチする。これには異論が無い所ですが、そのキャッチの仕方って、だれでもどこでもいつでも、均一なものでしょうか(問いかけ方が違うと言っているな)。



今でこそそれは静かになりましたが、昔の銀座線と言えば、車内でもガションガションと激しい騒音で、会話もままならないという感じでしたが、赤坂見附で同乗者が下り、座席に腰掛けたところでしばしぼんやり、ハッ!と気がつくと、下車予定の銀座を過ぎ、浅草にご到着ってなこと、経験があるのでは。

田舎に久しぶりに帰って懐かしい話に花が咲き、さてもう12時も回ったしそれじゃあおやすみなさいと、ヒンヤリする布団にもぐってみるとなにやら物音が。耳も「シーン」としてきたぞ。あぁ、なんだ。あんなところに時計があったのか。虫の声も遠くで聞こえるなぁ・・・、と思っていたら深い眠りに。

自分の耳でも、すげーでかい音の中でうとうとできたり、静かな場所では極めて小さな音に眠りを妨げられたり、といった環境による聞こえ方の違いがあることを、経験的に誰もが知っているかと思います。で、なんでかってことになると、かなりマイナーなテクニカルタームになる訳です。

ざっくりとした音の伝搬ですが、発生源から音波として空気中を伝わり、耳介(いわゆる耳)で集音、外耳道の閉管共鳴により特定周波数が増幅された後鼓膜にて振動へと変換され、耳小骨連鎖を経由する際面積比とてこの原理で信号が増幅され、内耳蝸牛に入力された時点で水圧に変換、受容器に到達します。

受容器は内耳蝸牛内コルチ器の中にピアノの鍵盤よろしく整列する有毛細胞群でキャッチされますが、外・内に分かれる有毛細胞はそれぞれ周波数特性を持っていて、周波数により到達部位が変わるリンパ液の波が与える刺激部位により、どの辺の周波数情報が来た!って感じで捉えられます。

二種類ある有毛細胞のうち、内有毛細胞はどれ位の波の大きさかを受容しますが、こちらだけでは取扱うことができる信号の大小の幅が極めて狭く、小さい音はなかなか聞こえずに、大きい音はうるさくてかなわん!という事になってしまいます。で、それを補うため、外有毛細胞の働きが大変重要となります。

外有毛細胞は入力される信号の大きさを感知すると、有毛細胞の土台となる基底膜の動きを規制/緩和することで、小さい音は大きい波となるように、大きい音は小さな波へと変化させ、これにより元々はとても狭い内有毛細胞のダイナミックレンジをエクスパンジョン/コンプレッション動作で拡大します。

へー、単にボリューム上げ下げしてるだけじゃん。と思ったら、これがまた周波数帯ごと、しかもかなり(ほぼ?)無意識下、瞬時に行われているのだから、マルチバンドエクスパンジョン&コンプレッションというより、チャンネルフリーといったバーナフォン社お得意の超信号処理がなされてる訳です。

なんでそんな凝った作りになっているのかの考察には進化論的なアプローチが必要ですが、その結果、過酷な環境下で、水平方向360度、時としては上下方向からの危険を素早く察知するとともに、様々な音環境にも適用することができるといった能力として、生命維持に多いに貢献したものと考えられます。

銀座線内での居眠りや「どぉ〜したとぉ〜おぉお〜いうんだぁ〜。時計のぉを〜音ぉがぁ〜、気になるぅうぅう〜。眠れない〜いぃい〜、ねむれないぃぃい〜っ!」(by大瀧詠一 fromはっぴいえんど「いらいら」)となるのは、実はこの内耳の働きによるものだ、と言うことなんです(「す」を強調)。

ふーん。で、なに?ってことなんですが、この危険察知や環境適応において、素晴らしい働きをする内耳が、いざポータブルオーディオにおいては、かなーり危険なことになる原因となったりしちゃったりなんかする訳です(TM広川太一郎)。

続く かな?