カスタムと言えば、やはり業界の雄、Ultimate Earsに尽きます。最初のUE製品はue 10 proでしたが、豊かなロー、ハリのあるミッド、きらびやかなハイと、いまだにマイリファレンスモニターです。音質だけではなく、ケーブルコネクタ一つとってもノウハウが詰め込まれています。
あの超小型サイズに、ヘビーユースに耐えながらも必要に応じた着脱が可能な機構+位相逆挿しをしない工夫が盛り込まれ、メモリワイヤーまでもを強固に埋入させるあたり、簡単なようで、大変考えられた構造です。で、このあたり特許がらみっぽかったこともあり(笑)、現在の方式を取るに至っています。
Westoneタイプもシンプルで良いのですが、横方向の力に対しどうしても引き抜きの力が加わり、かつピン自体も曲がりが生じてしまいやすくなります。ピンと挿入部の露出から汗が侵入し易くなるため、腐食からピンが固着、外部応力でピン破断、そのピンが取れねーっ!というトラブルも・・・。
Ultimate Earsではコネクターとハウジングが一対となり、引き抜きにはフリクションで、横方向に対してはハウジングによる外側規制により維持強度確保が図られ、ピンのコンタクト部を汗の侵入から守るという一粒で3度も4度も美味しい機構に。この辺、業務用としては音質以上に重要です。
ヴァンヘイレンのモニターエンジニアであったジェリー・ハービー氏がUltimate Ears社を創業し、開発されたイヤーモニターは、高い装着感、優れた音質、耐久性から、その後ワイヤレスイヤーモニターシステムを牽引。2009年UE社を売却後、設立したJH社にて手腕を発揮しています。
もう一社、カスタムイヤーモニターで重要な位置を占めるのが、マイケル・サントゥッチ氏率いるSensaphonics社です。サントゥッチ氏は聴覚専門家としていかに音楽家の耳を守るかという視点から製品開発に取り組み、音圧規制やシリコンを用いたディープシェルに高い思想が込められています。
特に外耳道残存容積を減らすことで、外耳道閉鎖効果を低減し、特にボーカリストで問題になる自声の響きに対処するという発想は、まさにオーディオロジストならではのもので、国内においても高い評価を得ています。顎関節の影響に対しても、シリコン材料を自社開発するなど、高い技術を有しています。
Sensaphonics社ですが、イヤーモニターを業務で使用する場合、耳穴が密閉され、鼓膜との間にできた空間で生じる共鳴現象、外耳道閉鎖効果が、特に自ら声を発するボーカリストで問題となる場合があります。
両耳穴にひとさし指を差し込んで耳穴を塞ぎ、「うーっ」と言ってみましょう(ま、「えー」でも「あー」でもいーんですが)。鼻のあたりを中心に、「もわー」っとした自分の声が広がるのではないかと思います。外耳道閉鎖効果では、250Hzから500hzをピークに最大20dB程度増幅されます。
モニター音を聞くのであれば、この外耳道閉鎖効果が悪影響を及ぼすことは無く、リスニングにおいてはこれを逆に利用し、豊かなローエンドの再生に活かすといったチューニング要素にもなったりします。またボーカリストの場合でも、モニターから返る自分の声をEQするので、通常は問題にはなりません。
ただ、個人差により、この響きに非常に敏感な方がいるのも事実で、こうしたケースでは優先順位のトップが外耳道閉鎖効果の緩和となります。補聴器でも広く取られる手法で、骨部外耳道と呼ばれる耳穴の深い部分(鼓膜から10mm程度より先)までシェルを接触させることで、大きな改善が可能です。
外耳道閉鎖効果の緩和には、もうひとつ「ベント」と呼ばれる方法があります。その名の通り外耳道が閉鎖されることにより生じるため、通気孔を設けることで遮蔽性を意図的に下げるというものです。Ultimate Earsでも設定があったかと思いますが、こちらも大変効果的な方法です。
しかし、ベントでは外来ノイズの侵入と、設計で想定された周波数レスポンスとの乖離が生じます。これも程度の問題のため、フィルター設定などで自声の響きとS/N、周波数レスポンスをバランスさせていきます。適用したケースでは、ゴスペラーズ、村上てつやさんのイヤモニで良好な結果となりました。
えーとベントの話から戻ってSensaphonics社イヤモニですが、2ウェイとシンプルながら、素直でモニター用途に適した周波数レスポンスが得られている反面、シリコン素材を同素材チューブで取り回すため、耳穴形状/長さにより、各ユニットの減衰からクロスオーバーにディップが生じる事も。
ウチでも散々やりましたが、シリコンシェルって内部構造との兼ね合いが大変難しく、かつ音導孔は2mm径程度を確保しないと、長さによってどんどんハイ落ちし、ローも輪郭がぼやけてきます。スペースが取れる耳甲介腔にレシーバーを置くんですが、ハードシェルと比べ、これが音導孔が長くなる原因に。
外耳道が太ければいかようにもできるんですが、5年位前か、福山雅治さんのUEのソフトシェルからの乗り換えでシリコンシェルをトライした時には、耳穴形状から、どうしても良い結果が出せず断念ということがありました。その後、音質的な改善とともに現在はハードシェルでご利用頂いております。
業務用にしてもコンシューマー用にしても、「ここんちのこの製品がベスト!」というのは無いようです。ケースバイケースでもあり好みでもあるからこそ、多様な製品が生み出され、活気のあるマーケットになるのではないかと考えております。(って、まとめ?!)
あの超小型サイズに、ヘビーユースに耐えながらも必要に応じた着脱が可能な機構+位相逆挿しをしない工夫が盛り込まれ、メモリワイヤーまでもを強固に埋入させるあたり、簡単なようで、大変考えられた構造です。で、このあたり特許がらみっぽかったこともあり(笑)、現在の方式を取るに至っています。
Westoneタイプもシンプルで良いのですが、横方向の力に対しどうしても引き抜きの力が加わり、かつピン自体も曲がりが生じてしまいやすくなります。ピンと挿入部の露出から汗が侵入し易くなるため、腐食からピンが固着、外部応力でピン破断、そのピンが取れねーっ!というトラブルも・・・。
Ultimate Earsではコネクターとハウジングが一対となり、引き抜きにはフリクションで、横方向に対してはハウジングによる外側規制により維持強度確保が図られ、ピンのコンタクト部を汗の侵入から守るという一粒で3度も4度も美味しい機構に。この辺、業務用としては音質以上に重要です。
ヴァンヘイレンのモニターエンジニアであったジェリー・ハービー氏がUltimate Ears社を創業し、開発されたイヤーモニターは、高い装着感、優れた音質、耐久性から、その後ワイヤレスイヤーモニターシステムを牽引。2009年UE社を売却後、設立したJH社にて手腕を発揮しています。
もう一社、カスタムイヤーモニターで重要な位置を占めるのが、マイケル・サントゥッチ氏率いるSensaphonics社です。サントゥッチ氏は聴覚専門家としていかに音楽家の耳を守るかという視点から製品開発に取り組み、音圧規制やシリコンを用いたディープシェルに高い思想が込められています。
特に外耳道残存容積を減らすことで、外耳道閉鎖効果を低減し、特にボーカリストで問題になる自声の響きに対処するという発想は、まさにオーディオロジストならではのもので、国内においても高い評価を得ています。顎関節の影響に対しても、シリコン材料を自社開発するなど、高い技術を有しています。
Sensaphonics社ですが、イヤーモニターを業務で使用する場合、耳穴が密閉され、鼓膜との間にできた空間で生じる共鳴現象、外耳道閉鎖効果が、特に自ら声を発するボーカリストで問題となる場合があります。
両耳穴にひとさし指を差し込んで耳穴を塞ぎ、「うーっ」と言ってみましょう(ま、「えー」でも「あー」でもいーんですが)。鼻のあたりを中心に、「もわー」っとした自分の声が広がるのではないかと思います。外耳道閉鎖効果では、250Hzから500hzをピークに最大20dB程度増幅されます。
モニター音を聞くのであれば、この外耳道閉鎖効果が悪影響を及ぼすことは無く、リスニングにおいてはこれを逆に利用し、豊かなローエンドの再生に活かすといったチューニング要素にもなったりします。またボーカリストの場合でも、モニターから返る自分の声をEQするので、通常は問題にはなりません。
ただ、個人差により、この響きに非常に敏感な方がいるのも事実で、こうしたケースでは優先順位のトップが外耳道閉鎖効果の緩和となります。補聴器でも広く取られる手法で、骨部外耳道と呼ばれる耳穴の深い部分(鼓膜から10mm程度より先)までシェルを接触させることで、大きな改善が可能です。
外耳道閉鎖効果の緩和には、もうひとつ「ベント」と呼ばれる方法があります。その名の通り外耳道が閉鎖されることにより生じるため、通気孔を設けることで遮蔽性を意図的に下げるというものです。Ultimate Earsでも設定があったかと思いますが、こちらも大変効果的な方法です。
しかし、ベントでは外来ノイズの侵入と、設計で想定された周波数レスポンスとの乖離が生じます。これも程度の問題のため、フィルター設定などで自声の響きとS/N、周波数レスポンスをバランスさせていきます。適用したケースでは、ゴスペラーズ、村上てつやさんのイヤモニで良好な結果となりました。
えーとベントの話から戻ってSensaphonics社イヤモニですが、2ウェイとシンプルながら、素直でモニター用途に適した周波数レスポンスが得られている反面、シリコン素材を同素材チューブで取り回すため、耳穴形状/長さにより、各ユニットの減衰からクロスオーバーにディップが生じる事も。
ウチでも散々やりましたが、シリコンシェルって内部構造との兼ね合いが大変難しく、かつ音導孔は2mm径程度を確保しないと、長さによってどんどんハイ落ちし、ローも輪郭がぼやけてきます。スペースが取れる耳甲介腔にレシーバーを置くんですが、ハードシェルと比べ、これが音導孔が長くなる原因に。
外耳道が太ければいかようにもできるんですが、5年位前か、福山雅治さんのUEのソフトシェルからの乗り換えでシリコンシェルをトライした時には、耳穴形状から、どうしても良い結果が出せず断念ということがありました。その後、音質的な改善とともに現在はハードシェルでご利用頂いております。
業務用にしてもコンシューマー用にしても、「ここんちのこの製品がベスト!」というのは無いようです。ケースバイケースでもあり好みでもあるからこそ、多様な製品が生み出され、活気のあるマーケットになるのではないかと考えております。(って、まとめ?!)